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YW協議会設立の趣意書.pdf
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1.設立にあたって 

(1)若者の成長に関わる活動とスタッフを巡る現状と課題

青少年育成や若者支援、その近縁領域を職とする人たちは、青少年施設やサポステ、ひきこもり支援団体、フリースクール等のスタッフとして、全国に数千人規模でいるといわれており、さらにその周囲には、ボランティアとして多くの人たちが活動しています。また、健全育成やレクリエーションベース、教育、ひきこもり支援ベースなど、実践団体や組織のバックグラウンドが多様であり、活動領域は同じでも基盤となる考え方や方法論が異なることも、青少年育成や若者支援活動の特徴のひとつです。

このことは、若者の成長に関わる営みの多様性を物語るとともに、スタッフ養成や研修方法の確立や活動の方向性が定まりにくい一因と考えられます。ヨーロッパ圏では、若者支援を担う存在が専門職業として位置づけられているのに対し、日本では、自分の仕事や活動をあらわす名前に困っている人も多いのではないでしょうか。さらに、若者と関わることが直接に金銭的利益を生むものではないため、一部を除いては不安定な条件下で勤務している人が多く、長く働きにくい状況によりスタッフが定着しないなどの課題が生まれています。

このように、職業としての特性や脆弱さが、この領域における専門性が確立しにくい状況につながり、社会的認知度や必要性における説得力の弱さや、人材養成の課題につながるものとして指摘されています。

 

(2)この間の動きと方向性 ~実践団体・ユースワーカーがつながること~

このような課題認識を持ちながら、主に大都市圏で、ユースワークの理念と方法に関心を持ちながら、日常的な若者の成長支援を行っている5つの団体で、2013年から継続的にこの課題に取り組んでいくことになりました。とりわけ「相談援助に限らず、あらゆる子ども・若者に開かれた施設で働く私たちに求められる専門性とは何か」を議論するたび、この課題(社会的認知の低さや人材養成の難しさ)に直面してきました。しかし一方で、団体を超えて共通の課題に向き合ったことによって、私たちは徐々に“実践者同士がつながる”手応えを感じるようになってきました。それは次のような感覚でした。

 

『それぞれの実践が互いの活動のヒントとなり得る』

『バラバラに行っていたスタッフ養成を共通化していくことで必要とされる専門性が明 らかになるのではないか』

『そしてこのことが、スタッフが長く働ける環境づくりにもつながるのではないか』

『各地の実践者・実践団体も同様の課題を抱えているのではないか?ならばもっと多くの実践者同士がつながり、情報交換をし、課題や事例を一緒に研究していくことで、若者の成長を支える仕事とは何かが見えてくるのではないか』

 

2.実践者によるコミュニティの意味

(1)専門家(専門職)コミュニティとは

専門的な実践を行う人がつながり合う専門家のコミュニティには、専門職能団体、業界団体(経営者の集まり)、研修団体(横断的自己研修組織)という種類があり、それとともに、それぞれ組織内部に向けた機能と外部に発信する機能が期待されているといわれます。

 

(2)ユースワーカーのコミュニティの意味

私たちは、若者の成長を支える実践者がつながる場として、ユースワークの考え方を共通基盤としたコミュニティを目指すこととしました。それは、ユースワークが海外において実践的・学問的蓄積を十分に持っているとともに、日本における若者の成長支援のこれからの方向性や具体的方法論を提示しうるものと考えるからです。そして私たちは、実践者の交流・相互研鑽をねらいとした「研修団体」としてのユースワーカーコミュニティを作っていくこととしました。

 

3.ユースワーカー協議会の構想

以下では、若者の成長支援に関わる実践を豊かなものにしていくための、つながりの場として「ユースワーカー協議会」の設立を提案します。ここでは、専門職性の強化を目指しつつ、有志専門スタッフの幅広い存在が若者の成長支援活動の基盤を形成していることも踏まえて、ユースワークを「職」とする人に限らない形での実践者コミュニティとして構想します。

 

(1)目的・会員について

○目的について

*ユースワーク(若者の成長支援)に携わる実践者が集まり、実践交流や研修による専門的力量の向上と実践の言語化(エンパワメント)及び、社会的認知の拡大を目指す。

 

○メンバーとして参加を期待する人・組織

*ユースワークにおける基本的な価値観と目標観(別紙)を共有する若者と関わる実践者であり、かつ、実践における力量の形成や向上及び、実践の言語化に意欲のある人。

・なお、当初設定される価値観・目標観は暫定的なものとして、目的に賛同した人たちの参画によりブラッシュアップされるものとする。

・ここでいう実践者には、有給実践者も有志(無給)の実践者も含まれる。

*ユースワークの価値を共有できる実践機関・団体(ユースワーク実践機関・団体)。

*ユースワークの基盤強化に協力できる研究者。

 

(2)具体的な役割と計画

○ユースワークに関わるスタッフの実践交流(現場見学会、研究会、シンポジウム等の実施)

○ユースワーカー養成プログラムの実施及び講師派遣

〇ユースワーカー養成プログラムの検討及び教材の開発(ハンドブック、ワークブック)

〇ユースワーカーを養成するトレーナーの育成

〇ユースワーク実践及び基盤強化のための調査、研究(実践の相互評価、ユースワークの価値観と目標観及びユースワークの範囲の明示 等)

○ユースワークやユースワーカーに関する広報や社会発信

○その他、若者支援実践の公共性確保の取り組み(ユースワーカー資格化の検討 等)

 

 

 

 

 

 

2019年7月

 

 

<呼びかけ人>

松田 考・東 晋次(公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会)

大槻繁美・七澤淳子・尾崎万里奈・吉田智之(公益財団法人よこはまユース)

井上敏明・白川陽一(名古屋ユースクエア共同事業体)

辻 幸志(NPO法人こうべユースネット)

水野篤夫・竹田明子・米田光晴・荒井将多・大下宗幸(公益財団法人京都市ユースサービス協会)